FC会報誌「C.K.Press」(1997年~)に掲載したものを、 月に1度連載します。(画像が不鮮明ですが何卒ご容赦下さい)
昔々第18回
前回は軌道に乗ったと思えたバンド活動。ところがメンバーに「壊し屋」と異名をとる人物が…。ご多分に漏れず解散の運びとなるのですが、果たしてその流れは!
解散、ディスコ、ストリップ?!
後で気が付いたとはいえ、「壊し屋」をメンバーに加えてしまったのはチャックさん一世一代のミス! え? それほどでもない。あ、そうですか。でもチョットしくじってしまったと思っているんじゃないですか? 「ハイ」。ね、そうでしょ。
解散間際まで演奏を続けていたのが、新宿は「プラネット」という大変大きなディスコで、若者の集まる、しかしどこか妙なお店だったそうであります。妙というのはバンド演奏の合間にショーが入るのだそうです。そのショーもマチマチで曲芸のようなものやマジック・ショー、中でも一番多かったのがストリップ寸前のソロ・ダンスなのだそうです。だって若者の集まるディスコでしょ? どう言った発想なのでしょうね。「歌舞伎町と言う土地柄を考えると、昔ながらのショー劇場がブームに乗ってディスコに変身したのだけれど、昔からの慣習というかなれ合いでこう言ったショーの芸能プロとの付き合いを続け、新旧が混在した感じの店になってしまったのではないか」とはチャックさんの談。
そこで昔ながらのショーをやるための打ち合わせがリーダーであるチャックさんのお仕事。ステージを挟んで下手のスペースがバンドの控え室。そして上手がショーのゲストの控え室。ショーには音楽が必要です。マジック・ショーなどはゲスト自身が持ち込んだテープなどを流すことが多かったので休憩できるのだそうですが、ソロ・ダンスはほとんど決まりのコースがあるそうなのであります。それは「ビギン、マンボ、スロー」というラテン・リズムやテンポ・チェンジをして踊りの流れを作るというものだそうで、おばさんダンサーなどはチャックさんが打ち合わせで控え室に「失礼します」と入った途端に「あ、ビギン、マンボ、スローね」と言われて終わりだそうでありました。こう言ったタイプの人は「お任せタイプ」で、お決まりのリズムとテンポで演奏すればO.K。でも中では「こだわりタイプ」がいて、譜面を持参して細かくテンポの指示やら、合図で演奏を止めるとか、演奏中でも腕をクネクネさせたらシンバルを鳴らせとか、細かい指示を承ることも多かったそうでございます。その譜面と言うのが業界用語で「勧進帳」と言って、横長の屏風のように畳んである譜面なのだそうです。次々に変化してゆく曲調やテンポがメドレーで書き込んであるため、このような形になり、この横に長い譜面と言うことで「勧進帳」と呼ばれるようになったんだとさ。別に「勧進帳」が解散の原因ではありませんが、ハイ。
サヨナラ“Back Island”コンチワ“REVOLVER”
さてさて、とは言っても知る人ぞ知る「君シリーズ」を最初に演奏したのはこのグループの前身でして、楽しくオリジナルをやろうと言うことで集まったのでありました。もっともこの頃は「君シリーズ」と言ってもまだシリーズにはなっておりません。何せ第1弾ですから。その曲は「かわいい君だから」という曲なのです。え?「君シリーズ」をご存知無い。そうでしょうね、私もあまりよく知りません。ではチャックさんにご解明いただきましょう。「別にシリーズ化するなんてぇことはいっこも考えていなくて、この曲をキッカケ(?)に『君』がタイトルになっている曲が何曲かあるということだけのこと」だそうで「オリジナル・ライブを続けているうちにそうなってしまった」そうです。ま、この話は後にも登場すると思われますのでお待ちください。因みに「バック・アイランド」では「おれっておかしいんだ」という曲もやったとか!?どちらも聴いてみたいですね。
しかし、残念ながら解散の運びとなってしまいました。その解散を1ヶ月前に控えたある日、何とあのリッキーさんと偶然再会したのでした。1年ほど前にも渋谷のお店でのオーディションの時にバッタリ会ってはいたのですが、今回はリッキーさんの「思う壺」だったようです。と言うのもリッキーさんのバンド“REVOLVER”のキーボードが辞めることになっていてメンバーを探していたのだそうです。と言うことはチャックさんにとっても「思う壺」。だって直ぐ次の仕事にありつけるんですもの。良かった、良かった。
こうして“Back Island”は解散し、“REVOLVER”に加入する運びとなったのです。しかもキーボードでの加入する運びとなったのです。しかもキーボードでの参加です。今でこそ「チャックさんは何でもこなす」と言われていて心配するものなんざぁ一人もいないでしょうが、大丈夫だったのでしょうか?「いや、ダメでした」。えっ?
新天地で高価な楽器が技量をカバー
有難い事とは言え不安を抱き、チャックさん自身もリッキーさんに「いきなりは無理だよ」とは言ったものの、リッキーさんは「大丈夫や」だったそうであります。今も昔も同じようで想像がつきます。
チャックさん自身、“ALBATROSS”時代にステージでピアノを弾いてはいたものの、全面的にキーボードで仕事と言うのは初めてでして、毎日がドキドキだったそうであります。簡単なメロディーも弾くことが出来ず情緒が不安定な毎日を過ごしたそうであります。が、しかし、やるからにはと中古ではあるが高価なハモンド・オルガンL型とレズリー・スピーカーを購入したのでありました。私にはチンプンカンプンですがご存じの方は「おーっ!」なんでしょうね。中古だったので少々手を加えなければならなかったそうですが、「音は絶品だった」そうであります。元の持ち主はなんでもグループ・サウンズ「ワイルド・ワンズ」の元メンバーで「チャッピー」さんと言う方だったそうです。新品ですと2つ合わせて百数十万円だそうですが、中古ですのでほぼ半額で購入したそうです。いやー高いすね。こう言っては何ですが、キーボードとしては駆け出しのチャックさんが、これだけの楽器を買うだけの価値はあったのでしょうか?「それがあったんだよ。このオルガンのお陰で下手な腕前をどれだけカバーしてくれたか。このオルガンを購入しなかったら、アッという間に挫折していたかもしれない」。へー、そんなものなのでしょうかねぇ。
ともあれ新天地“REVOLVER”で、しかも初経験のキーボードで頑張っていかなくてはならないと言う覚悟を胸に先へ進むチャックさん。過去のことでありながら、今更に「頑張れーっ!」と腕を振り上げたくなってしまうのは私だけでしょうか?さぁ、これから始まるリッキーさんとの初めてのユニット“REVOLVER”時代はどんな時代なんでしょうか?次回まで、おっ楽しみにー!