【連載9】チャック近藤の昔々

FC会報誌「C.K.Press」(1997年~)に掲載したものを、 月に1度連載します。(画像が不鮮明ですが何卒ご容赦下さい)

昔々第9

ここで、前回のおさらいです。米軍キャンプで腕を磨いた幸雄青年はプロモーターの紹介で外国人ばかりが泊まりにくるという箱根のホテルのサロンでの演奏を任されます。今回はその箱根のお話です。

いざ、箱根へ!

バンドとしては初めてのまとまった仕事とあって、その仕事に入るまでの事務処理があるということも、この時期に初めて知ったのだそうです。そりゃあんたそうでしょ。こういった仕事はもとより、どんな仕事にも契約ってぇものがあるのは当たり前。ところが音楽をやることしか頭になかったそうであります。またしても決まってこういった仕事を任されるのが幸雄青年だったのであります。何度か青山の事務所に足を運び、さあいよいよ箱根に出発です。
東京から日帰りの観光地として有名なだけあって、箱根なんざぁ近いものであります。車で飛ばしても1時間30分ほどで、新宿から小田急ロマンスカーに乗れば1時間5分で「箱根湯本駅」まで着いてしまうのです。とはいってもALBATROSSのみんなは2ヶ月以上も親元を離れるのは初めての経験でありました。期待にあふれる反面、心細さも一塩であったそうで…。

ピアノ・サウンドと曲作り

仕事は一日40分4回ステージで休みは全く無し。いやはや結構大変でしたね。ホテルと来た日にゃレパートリーも幅広く要求されるそうで…そりゃそうですよね世界各国からのお客さんが集まるところなんですから、いろいろ演奏ができなきゃまずいっすよね。ましてアータ、まとまった仕事は初めてのALBATROSSでござんすよ、そんなにレパートリーなんてぇありゃしないわけでやんすよ。そこで考えたのが「ビートルズは世界的に有名」という3人の意見が勝手に一致し、知っていると言うだけで練習もしていない曲を本番でやっちまったのであります。好きこそものの上手なりでしょうか、お陰で何とかこなせたそうであります。幸か不幸かこのころはまだビートルズが解散して間もない頃で、まだまだ新しかったのでございます。
幸雄青年が気を引かれたのはお店にあるピアノでありました。そこでまた彼の頭にひらめいたのが「オリジナルにピアノ」だったそうで、お店が始まる前の時間はよくピアノを弾きに…いやまだ弾くなんてぇもんじゃありやせん、いじりに行ったそうでギターコードの和音をピアノに当てはめ、なんとかコードが弾けるようになったそうであります。そうなりゃこっちのもんで、「オレ、ステージでピアノ弾く」ときてしまう。おいおい、3人しかいないんじゃないの?ベースは誰が弾くのよ。え?無し?それもピアノ・サウンドが新鮮だったそうであります。
ピアノを生かしたのはステージだけではありません。オリジナル思考のALBATROSSですもの、もちろんピアノで曲が出来上がりました。毎日幸雄青年は営業前の店でピアノをポロンポロンといじり、小春日和のときはメンバー3人プールサイドで歌詞を考えたり、オリジナルの相談をよくしたそうであります。なんとその頃に作った楽曲が“It’s Like The Beatles”に入っているんだそうです。楽曲は“That Makes Me Lonely”で、作詞・小西譲治、作曲・鈴木登、近藤幸雄。正に第一次ALBATROSSのメンバーで作られた曲なのです。レコードでは鈴木登さんのギターがゲスト参加しているんですよ。あー、はやくCD化して多くの人に聴いて貰いたいー!

久々の嬉しいお声掛かり

もちろんオリジナルもステージで演奏したそうで、英語の歌詞というのが功を奏して?なかなか受けたそうであります。何てったってぇ曲が出来るとすぐに本番で使っちまうんで、曲が出来ると即レパートリーが増えていったのであります。
そんななか、知り合いから知り合いへと話が伝わり、コロムビア・レコードのディレクターが箱根まで見に来るというじゃあありませんか。久々のお声がかかり、幸雄青年はとっても嬉しかったそうです。今度こそ実現させるぞと息巻いたのものの、ただここに一つ欠点があったのであります。他でもない、どう世渡りをしたらいいものか、どう対処したらいいものか全くわからず、まあ、真面目というのでしょうか、コロムビアからお話があったからコロムビアでなければならないんじゃないか、などという世間知らずなことを考えてしまったのであります。コロムビアでレコードデビュー出来ればそれはそれでいいのですが、とにかくこの箱根の仕事が終わってからコロムビア・レコードへ行き、話を進めるということでありました。
さぁ、ALBATROSSレコードデビューに向けて曲作りに一生懸命です。初めての旅としてはかなり充実した合宿のようなものであったようで、ホテルのみなさんにも良くしていただいたそうであります。これをバネにALBATROSSは以前よりも更に音楽へのめり込み、また一つ大きくなって東京へ帰るのであります。これから先、コロムビア・レコードとどんな関係になるのでしょうか。
続きはまた次回のお楽しみー!