FC会報誌「C.K.Press」(1997年~)にインタビュー掲載したものを、 月に1度連載します。
連載第24回「チャック近藤の昔々」
いよいよビートルズ専門店のオープンです。当時の様子を知りうる殆んどの人々は、もうそのお店には通っていません。現在では計り知れない当時の様子がわかりますよ。
物凄い盛況ぶり。でもダメだった。
ジョン・レノンの一周忌のオープンと決まった六本木は“Cavern Club”。不安と期待が入り混じった複雑な気持ちだったそうであります。オープンに先駆け、前日にお店に入りスチールの撮影と相成なり、「えっ? 明日オープンなのにまだ工事中なんだ。」と驚きの中、撮影は続けられたそうであります。いやいやオープンぎりぎりの完成だったのですね。スチール撮影の後、経営者側、スタッフとバンドのメンバーの顔合わせが行われたそうで、副社長から「まあ、知った顔もいるようですが…。」とはチャックさんのことです。何故ならば2年ほど前からチェーン店の「ケントス」に月に一度は出演していたからなんですと。そんな和やかな(?)顔合わせを滞りなく行ったそうですが、まだこの時点では怒涛の毎日が続くとは誰も思ってはいなかったのでしょうか!?。
さて、いよいよ12月8日。オープンのその日がやって来ました。物凄い人だかりで「こりゃぁ凄い! ビートルズはホントに凄い!」と思ったそうであります。演奏はウケにウケ(?)店内は大混乱、踊りまくって酔っ払い続出、演奏そっちのけでナンパに励む人ありで、チョットばかしチャックさんは不安にも感じたそうであります。と言うのもチャックさんとここにいるお客さんのビートルズ感が違うのではないかと感じていたからです。「まぁお店が繁盛するってぇのは好い事だけれどもオレ達の演奏をじっくり聴いている人が少なかったからねぇ」。城間さん以外のビートルズの偉大さを知らないメンバーは大盛況にウキウキで盛り上がっているし、不安ながらも、まぁ幸先はいいんじゃないのと思ったそうであります。そりゃぁそうですよね、連日連夜満員御礼の状態でそれこそ足の踏み場のないくらいに人、人、人だったのですから。「でもダメだったんだよ。」って? 何でですか? 凄いじゃないですか。私も存じておりますが、あの行列のできるお店はこうして始まったのじゃぁないんですか?! 分かりませんねぇ。
こりゃぁ一体!?
日曜日は4回のステージで、それ以外は毎日20:00から6回のステージでオープン月の12月は本当に物凄かったようです。物凄いと言えばオープンから一ヶ月と言う間、何とお休みがなかったのだそうで、若かったとは言えそりゃぁ物凄かったですね。でも連日満員で意気揚々と正月休みを向かえたのでありました。
さて、4、5日の正月も終わり新たな年の始まりです。「よーし、今年もがんばるぞ!」と出勤。軽くリハーサルをして本番。おや? お客さんが少ないな。ま、正月だし、まだ会社も始まったばかりだろうし、そのうちドット、たくさん、ワンサカお客さんが来るだろう。そう思っていたチャックさんをはじめバンドのメンバーでしたが、数日経っても「閑古鳥」。え? どうなっちゃっているの? 「あのね、オープンから一ヶ月はほとんどが招待客で、しかもボトル・サービスとかで新店舗のお披露目が目的だったのだそうでした。どうりで最初から物凄いお客さんの数だと思ったよ。」です。社長の談では「6ヶ月は我慢の時。徐々にお客さんが来るのを待つ。」だそうでした。
1月からはガラガラの店内ではありますが日曜日に「アロアナ」というグループが出演してくれることになり1ヶ月につき4回のお休みをもらえることになったそうです。ん? 日曜日が5回あるときはどうなんですか? 「月4回だから。ホラ、ね。そういう時は2週連続ってことですよ。」だそうです。
さらにヒマな時期が続き、3ヶ月位は後の盛況振りをみると考えられないお客さんの入りだったそうです。夜の12時を過ぎるとお客さんが居なくなってしまったり、カップルが一組なんてこともしょっちゅうだったそうであります。でも、たとえお客さんが一人も居なかろうが毎日6回のステージは休むことなく続けたそうで、何でも入ってきたお客さんの耳に音が聴こえるように休憩時間以外はちゃんと演奏していたそうです。これも辛い話ですね。チャックさんは日頃「お客さんが居ようが居まいが、ヒマだろうが忙しかろうが僕のやることは変わらない。」と言っていましたね。こんなところからそう思うようになったのでしょうか?
頑張り過ぎて痩せちゃった!
オープンから3ヶ月が過ぎようとした頃からチラホラとお客さんが増えてまいりました。ただしネクタイにスーツの「リアルタイム・ビートルズ・ファン」ばかり。つまり殆どオジサン。少々の女性客はもちろん大のビートルズ・ファンと上司に連れてこられたO.L.さんたち。でもようやくお店も活気が出てきたのです。オジサン達ネクタイ族は大声でビートルズを張り上げ、部下の女の子達には迷惑にももっともの様な薀蓄を聞かせ、テーブルを叩きボトルをマイクに仕立てて大騒ぎの有様。でもチャックさんはやはり「ビートルズって凄い!」と思ったそうであります。お客さんはこう言ったそうです「酒を飲みながらビートルズをライブで聴けるなんて嬉しいね。何てったって我々が胸を張って入れるライブ・ハウスが出来たってのが良い!」と。ステージ中は演奏に合わせ声を張り上げ、休憩時間中は好きもの同士がビートルズ談義に花を咲かせ、店内は飾り付けだけではなくようやく本当に意味でビートルズ一色になったのでした。それだけの混乱状態ですから危ない目にもあったようで、ステージには倒れこんできてギターに傷をつけたり、マイクスタンドを倒されたり、もうヒッチャカメッチャカだったそうでありました。
社長は言ったそうです。「暇な時期は最低でも6ヶ月はと腹をくくっていたのだが、3ヶ月でこんなに盛況になって。嬉しい誤算だ。」チャックさんも嬉しかったでしょうね。「全然!」。何でですか?! 連日満員になって良かったじゃないですか。「そりゃぁそうだけれど、何と言っても間奏までも口ずさめてしまうほどファンに浸透しているビートルズだもの。さらにビートルズサウンドに磨きをかけ、レパートリーを増やしていかなければというプレッシャーにもつながって前途多難だなと思ったのさ。」そっか、チャックさんはようやくスタートしたと感じたのですね。あまり頑張り過ぎちゃってオープンから徐々に痩せてしまったチャックさんは「チョット太り気味だったから良い感じと思っていたのに」あれよあれよと言う間に半年で8kgも痩せてしまったそうです。胃にはシコリができ、心配したのは周りの人間で「あまりウルサイから」一日検査に病院へ行ったそうです。検査結果は「ハード・ワーク」だったんですって。胃のシコリは? 「あれは肩こりと一緒で僕の場合はそれが胃に出たということだそうだよ。揉めば消えちゃうんだ。」でも大事に至らなくて良かったですね。
いよいよ私達の知っている大盛況の“CAVERN CLUB”の始まりです。色々なお客さんと新聞、テレビなど、それも日本にとどまらず色々の取材大会。またまたバラエティーにお話が進みそうですね。この先はまた次回のおっ楽っしみー!
