FC会報誌「C.K.Press」(1997年~)にインタビュー掲載したものを、 月に1度連載します。
昔々第23回
よもやビートルズ専門店なぞ出来るとは思っていなかったし、ましてやそこにレギュラー出演するなんて考えてもいなかったチャックさん。でも現在に至るスタートです。
恐ろしいや、ビートルズ・フリーク!
12月8日のオープンに向け、いよいよリハーサルのスタートです。先ずチャックさんが考えたのが一日に何曲が必要かということだったそうです。今でも1回のステージが35分間と言うのは、何でもビートルズが来日公演のときのステージ時間だったと言うことでこうなったそうであります。1回の時間として考えればそんなには長い時間ではないのですが、これを一日に6回やるってんですから凄いものです。ましてやビートルズの楽曲はご存知のように短いために1回のステージで10曲と言うのが目安だったそうであります。そうすると一日の演奏曲数は60曲と言うことになりますねぇ、フムフム。こりゃ凄い。ところがビートルズは公認曲が全213曲。こんなものでは足りるわけは無いと踏んだチャックさん。でも時間が無い。とにかく万が一足りなかった場合を考えてオープンまでに70曲を仕上げようと考えたそうであります。「それでもビートルズ公認曲数の三分の一しかないんだよね。時間は無いし、え~い、とにかくとっかからねぇ事には始まらねぇ!」だそうで、リーサルのスタートです。
チャックさん自身はもちろんビートルズの全ての楽曲を聴き、知ってはいるものの演奏するとなると話しは違いまして、かなりてこずったそうであります。コピーをするにつれ「あれっ、ここは思い違いしていた」なんてぇのがドサドサ出てきてしまったそうです。初代メンバーの城間さんはもちろん元Bad Boysですのでビートルズを知り尽くしてはいましたが他の約2名はビートルズだろうがなんだろうが、コピーをして演奏をすれば良いんだ程度でこだわりが無く、かえって普通にリハーサルが出来たようです。「それじゃダメなんだよ! ビートルズ・ファンは違うんだ。」といち早く感じ取っていたチャックさん。そこそこの演奏では納得は出来ぬというビートルズの大ファンたちを前にビートルズを演奏しようってんだから簡単に考えられる訳が無いと言うのです。「音楽を職業としてやっていてもビートルズは別格で、ステージで演奏するにも手が付けづらく、ましてや’80年代ですぞ。ある意味リアル・タイム・ビートルズ・ファンには期待も大きく待ちに待った企画だったんだよね。考えれば考えるほどビビッちゃうんですの」。あ~恐ろしやビートルズ・フリーク。
依頼されたのにオーディション?!
ある程度の曲数が仕上がってきた所で当時の所属プロダクションのの社長から「今度オーディションするらしいから」とのお言葉。えっ? この仕事って依頼されたのではなかったのですか? で、オーディション? いやいやこれにはチャックさんも少々驚いたそうであります。でもまぁ仕方が無いことでオーディションとやらをやることに。
場所は「新宿御苑」にあった“MOZ Studio”。リハーサル中に帽子を深々とかぶった一人のプロデューサーが登場。何と元ヴィレッジ・シンガース、そして俳優として活躍中だった「林ゆたか」氏でありましたそうで、これまた驚きだったそうであります。じっと僕たちの演奏を聴き、数曲やったところで出演にあたり注文があると仰ったそうでして、それは「首を振るとかアクションを付けろ。名前は“Bad Boys”にしてくれ」と言うものだったそうです。またまた驚きのチャックさんたち。その上「他にもバンドがいて、それは少々演奏は落ちるが元気の良い若いバンドだ」そうで、「どっちにするかまだ決めていない」と仰ったそうであります。またまた驚きのチャックさんたちでありました。でもチャックさんの答えは「僕たちは一生懸命に演奏をします。振りを真似たり、名前を“Bad Boys”にすることもありません。ビートルズ・ファンに受け入れられるように演奏をし、名前は“LadyBug”で行かせてもらいます。」と主張したのでありました。そんな事を言っちゃって、落とされたらどうするつもりだったんでしょうね。「でも林さんは僕たちを選んだのさ」。
何と言っても「勢いと黒っぽさ」
さてまたまたリハーサルに戻りますが、チャックさんは「リハーサルが進むに連れ、ビートルズの手強さが更に強く感じた」そうなんです。「とにかく普通じゃない」そうで、自身の著書にもある通り、勢い、ハーモニー、タイミング、発声、音色、どれをとっても他に類を見ないと言うのです。リハーサルは自分たちの演奏を客観的に聴くためにも連日録音をし、チェックしていたそうですが、少しずつどこかが違うそうなのです。「これじゃぁビートルズ・フリークを騙せない」。えっ? 騙すんですか? 「そりゃそうだろう。だって僕たちはビートルズじゃないんだもの」。そりゃそうですね。でも騙すってのは…。「いいの。だって本物じゃないんだから。それでビートルズを感じてもらおうとしているんだから、どれだけ騙せるかでしょ? 違う?」。
ともかくリハーサルは進み、この時点でチャックさん自身が発見したことが有るそうです。それは今でもステージで時々言っている「ビートルズの楽曲はスローは早めで、速い曲はそんなに速くなくテンポの差があまり無い。ジョンはパワーを感じるがそんなに怒鳴ったりがなったりはしていない。ポールの歌は直線的で引きずったような歌い方はしない。ジョージの歌やギターは他のメンバーの誰よりもクリアーで歯切れが良い。リンゴのドラムはいろいろなタイミングを持っている。この4人の特徴が合体しないとビートルズにならない。」等などだそうです。そうは言っても言うは易し行うは難しですよね。「だからリハーサルを重ねるんでしょ」。ハイ。
でも重要なことがまだあるんです。何と言ってもビートルズが他のミュージシャンたちと大きく違う所は「勢いと黒っぽさ」なんだそうであります。ただしこれもかなり繊細な「勢いと黒っぽさ」で、一つ間違えれば「雑で品が無い」状態になってしまい、気にし過ぎるとこざっぱりしてしまうのだそうです。いや~さっぱり分かりません。でもチャックさんの演奏や歌を聴いて、他のバンドを聴いてみると何となく違いが分かるような気がします。ちょっとえこひいきかな? でもチャックさんは日ごろも「この勢いと黒っぽさがが自分に出せなくなったら引退のときだ」などと言っています。いやいや引退なんて、まだまだ私たちにズシンと響かせてくれていますよ。ね、みなさん! さて次回からはいよいよビートルズ・ライブ・ハウスがオープンし、本番の始まりです。おっ楽しみにー! By Landbeat